2022年09月10日
愛すべき教材 ~『鳥獣戯画』を読む~

「『鳥獣戯画』を読む」という教材をご存じですか。光村図書小学6年生の国語の教科書に11年間掲載され続けている息の長い教材です。
私とこの教材との出会いは,9年前に遡ります。先生方に国語科の授業を公開することになり,教材研究に取り組みました。「この教材の魅力は?この教材で教えることは?」繰り返し文章を読み,分析していきます。
しかし,教師は,教材研究で分かったことの全てをこどもに教えるわけではありません。その中から,新鮮な素材だけを取り出し,レシピを工夫して,おいしい料理を提供する,それが授業づくりだと思うのです。
新鮮な素材は「教材の魅力」,レシピは「学習の展開」,おいしい料理は「こどもと教師とが共に創る学習そのもの」。実際の授業に至るまで,教師はいくつもの壁を乗り越えます。しかし,私の教材研究は一筋縄にはいかず,段々と自分を苦しめる教材が憎くなってきました。『鳥獣戯画』のウサギが,自分を挑発しているようにも思えてきました。
しかし,教材研究を続けると,「この教材のことを一番理解しているのは私だ。愛しているのは私だ。」という悦に入る瞬間がやってきます。そこでやっと自分に余裕ができ,授業中ではこどもの声に耳を傾けることができるのです。
今では,「『鳥獣戯画』を読む」は私の一番愛する教材です。そして,その絵を身近なところで見かけると,ついつい目が行ってしまいます。学生たちには,教材に愛情をもつ教師になってほしいです。
廣口 知世
Posted by 京都ノートルダム女子大学こども教育学科
at 05:45
│せんせいのたまごセミナー