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2021年08月16日

せんせいのたまごセミナー~ コロナ禍がもたらす社会と教育の変化

 きょうは新型コロナウイルスのパンデミックが、社会と教育にどのような影響や変化をもたらしているかについてお話ししたいと思います。コロナウイルスは、みなさんやみなさんにとって大切な人が感染するかしないかだけの問題ではありません。コロナ禍が社会に与えている影響は深刻です。たとえば、京都は世界中から人々が訪れる観光都市ですが、コロナ禍で入国制限がかかっているため、海外からの観光客は長らく途絶えています。そのため、宿泊業や飲食業や運輸業などに就いている人々は、深刻なダメージを被っています。けれども、コロナ禍によってすべての人々が生活の危機に直面しているのかというと、そうではありません。経済の重要な指標の一つに株価がありますが、日本の主要な企業の株価は、コロナ禍で一時暴落したものの、現在ではコロナ禍以前をしのぐ高値をつけています。つまり、経済的に活況なのです。どうしてこんなことが起きているのかというと、そういった企業は、わたしたちが通常考えるようなモノの生産と販売から利益を得ている以上に、電子マネーによる巨額の株取引から利益を得ているからです。こうしたことから、今の社会では、人々の経済的な格差、貧富の格差が急激に拡大しています。このことは世界の多くの国々に共通する傾向です。
 教育に関することで言えば、コロナ禍は、IT企業と教育企業の学校教育への進出を加速させています。日本で新型コロナウイルスが騒がれはじめた昨年の3月、当時の安倍首相は、全国すべての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校に対して臨時休校を要請しました。このことは、ITと教育企業にとって、大きなビジネス・チャンスとなりました。その直後から、経済産業省の「未来の教室」のサイト(学校教育を所管する文部科学省のサイトではありません)では、たくさんのIT企業と教育企業が自社で開発した教育ソフトウェアを提供しはじめ、全国の学校がそれらを利用するようになりました。これだけを聞くと望ましいことのように思われるかもしれませんが、そうした教育ソフトウェアの利用が学校の授業に代わるだけの価値を有するものかどうかは、学問的な検証がなされておらず、かなりの疑問です。今年の春、全国の小・中学生に一人一台の情報端末が配備されましたが、端末の配備自体は問題ではありません。問題は、学校の授業をコンピュータに代替させることが十分な検討もないままに進められているところにあります。このことは、学校教育のレベルを引き下げることにもなりかねません。
京都ノートルダム女子大学

 以上のようなコロナ禍で進行している社会と教育の変化に対して、教育や保育にたずさわる人、これから教育や保育の世界に進もうとしている人には、何ができるでしょうか。人々の経済的な格差が拡大していることに対しては、学校や園において、「ケアし合いシェアし合い学び合える子ども」を育てることが必要です。学校が競争の場から協同の場へと変わることなしに、人類に未来はないと言っても過言ではありません。IT企業や教育企業が推進するICT教育が拡大していることに対しては、やみくもに授業をコンピュータに代替させるのではなく、子どもが学びを深めるにはコンピュータをどのように使えばよいかをよく考えることが必要です。コンピュータは、自分で何かを調べたり、レポートや記録を書いたりするときには非常に有効な道具です。そういう使い方に慣れることが肝心であると思います。



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Posted by 京都ノートルダム女子大学こども教育学科  at 09:25 │せんせいのたまごセミナー