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2020年10月15日

せんせいのたまごセミナー~教育について学ぶとはどういうことか

 このブログを読んでくださっている高校生のみなさんは、教員養成系の学部や学科に進学して、こどもの教育について学ぼうとされている方だろうと思います。みなさんも知ってのとおり、大学では、法律、経済、医療、農業など、実にさまざまなことがらに関する研究が行われています。これらのことがらに関しては、大学に行くまでほとんど学ぶ機会がありませんから、これらを大学で学ぶことにした場合には、無知に近い状態で入学することになります。
 この点で、教員養成系の学部や学科に進学する場合は、かなり事情が異なります。もしかりに、「あなたは、教育について、本当に何も知らないのですか?」と問われたとしたら、どのように思うでしょうか。「もちろん知っていることもあるけれど」と思うのではないでしょうか。それもそのはずです。みなさんは、今日に至るまで、すいぶん長い間、教育を受けてきたからです。そして、そこでたくさんの先生と出会い、かかわってきたからです。教育については、だれもが、すでに何らかのことを経験しており、何らかのことを知っており、何らかの考えをもっています。教育は、だれにとっても、未知のことではないのです。そうした意味では、大学での教育についての学問は、自分自身の経験に基づいて考えられることがあるために、他の分野についての学問よりも、身近で親しみやすく感じられるかもしれません。
 しかし、このことには、実は、大きな落とし穴があります。教育については、自分自身の経験やそれに基づく思い込みにとらわれてしまって、それとは異なる見方や考え方をあらたに身に付けることがとても難しいのです。たとえば、どの教科でもいいのですが、学校の成績がよかった人のなかには、自分がやってきた学習方法が一番いい方法、一番正しい方法だと思い込んでしまっていて、他にもいろいろな方法があるということに考えが及ばないという人がいます。しかも、やっかいなことに、自分の経験や思い込みに強くとらわれているということを本人が自覚していなくて、そこから抜け出せない場合が多いのです。このように、教育について学ぶことは、身近で親しみやすく感じられるけれども、決して簡単なことではないのです。
 教育について学んでいこうとする人には、自分の経験したこと、自分が正しいと信じていることを超えていけるだけのしなやかな知性が必要です。自分の経験したこと、自分が正しいと信じていることを足がかりにして学んでいくのですが、それがすべてではなく、教育についてのさまざまな考え方、さまざまな方法があることを知り、それらの意義を理解し、身に付けていくことが求められます。なぜなら、あなたが教育について学び、やがて保育者や教師になっていくのであれば、あなたは自分とは異なるさまざまな子どもを引き受けて、それぞれの子どもに合った最善の方法を探りながら、その子どもの育ちを支援していかなければならないからです。
 私たちが生きている現代の社会は、人類がかつて経験したことのない高度で複雑な問題を数多く抱えています。そうした問題の解決に向けて他者と協同し、持続可能な社会を築いていくために、教育のあり方も大きく変わっていこうとしています。自分の経験や思い込みだけにとらわれず、京都ノートルダム女子大学で私たちといっしょに新しい教育のかたちを探究していきませんか。
 以下の写真は、私たちの学科で使用しているオリジナルテキストです。表紙のデザインは、藤本陽三先生によるものです。
こども教育ハンドブック



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Posted by 京都ノートルダム女子大学こども教育学科  at 09:25 │せんせいのたまごセミナー