遠隔授業が盛んになると、病弱教育は必要なくなるのでしょうか?

京都ノートルダム女子大学こども教育学科

2023年01月23日 00:07

  病気で入院している子どもの多くは、突然の入院で、通学していた学校から引き離され、仲間から取り残される焦りや、孤独感、学習が遅れることの不安などに苛まれます。そのような子どもたちに対して、入院していても教育を受けられる病弱教育があります。

 これまで先進的な病弱の特別支援学校では、インターネットを介したテレビ会議システムを活用して入院前に通っていった学校(前籍校)との交流や授業参加等に取り組んできました。ICT環境が十分整わない学校には、機材の貸し出しをはじめノウハウの蓄積を行い、その成果から文部科学省でも同時双方型遠隔授業配信を行った場合は出席扱いできるなどの通知を出しています。またGIGAスクールの推進や新型コロナウイルス感染症対策によるオンライン授業の取組が多くの学校で行われるようになりました。こうした状況から今後、病気療養児童生徒に対するインターネットを介した同時双方向通信による学習活動が積極的に推進されるものと考えられます。


 そこで病弱者教育論Ⅱの授業の中で学生のみなさんに、「遠隔授業が盛んになると病弱教育は必要なくなるのかどうか」尋ねてみました。答えは、全員「無くならない」でした。前籍校と病室を結んだ遠隔授業により、通っていた学校や級友とつながっている感覚や学習の遅れへの不安の軽減等が図られます。しかしそれ以外にも病弱教育が担う役割があると言います。学生の皆さんの意見をまとめると、次の3点に集約されます。
①病気療養中の子どもたちの不安は学習面だけでなく、病気・治療への恐怖、孤独感、将来への不安など多くの不安を抱えている。
②画面上だけでなく、直接関わることが大切である。
③子ども(その家族)、学校、病院をつなぐ役割が必要である。
 ICT技術等の発展により、多くのメリットが生み出されています。そのメリットを生かしつつ、多くの不安にさらされている子どもたちに、直接寄り添うことができる人の存在はとても重要で大切です。病気の子どもとその子に関わる人たちにとって、医療職でない病弱教育という専門性が必要とされています。

江川正一

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